悪役達の邂逅風景:その後 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ・とある仕事前の上司とバイト 「このリストに載っている人間を半月以内に消して欲しい」 「共通点がないなぁ? どういう基準なんだ?」 参謀は何故か視線を逸らした。 それから言い難そうに口を開く。 「外部からの依頼だ」 「はぁ? え、それどういう事なわけ?」 「財政難なんだよ! いや、そもそもこの悪の組織って金の事全く考えてなくて…… 怪人一匹、雑魚戦闘員つくるのにも薬代やら機械代やらシャレにならないほど掛かるんだぞ! 俺が参謀やる前まで考えなしに金を使ってきた所為で資金は底を突きかけてるんだ。 だからこうして外部の依頼で稼がなきゃ、組織の人間の生活も保障できなくなる!」 「………お前も大変なんだな」 それでも給料はちゃんと出してくれるあたり律儀だが。 尤も、抜け目無くバイト料金と言われて殺し屋より少なかったりするが。 「正義の味方共よりこちらの方がかなり深刻な問題でもある。実は破壊活動も依頼のものが主だ。 あと、作戦実行時も『命を大切に』をスローガンとして掲げている」 「……いや、いろんな意味で駄目だろ?」 危なくなったら敵前逃亡をする怪人+雑魚戦闘員。 考えるだけでかなり情けない悪役の図に思える。 参謀も苦笑を浮かべ、手際よく書類を片付けた。 「ま、しばらくはそんな感じの予定だけどね」 ・殺人鬼(殺し屋のバイト中)と殺し屋の共同作戦中 「なぁ、相棒殿。今回は目撃者出さないようにしろって命令だよなぁ?」 「ああ、今回は目撃者がいれば始末しろと言われたな」 不機嫌そうな殺人鬼の投げたメスを銃で防ぎ、殺し屋は答えた。 殺し屋は意外に思ったが、殺人鬼は完璧主義に近い理念でバイトをしている。 組織への忠誠心は無いが、そこだけは信頼できるものがあった。 「なのに、何で追わないわけ?」 殺人鬼の言葉に、しばし殺し屋は考え込む。 「ふと思ったのだが……盲目の場合は『目撃』者と呼べるのか?」 「……………この組織ホントに大丈夫なのか!?」 競作小説企画「Villain」参加作品 【テーマ:悪人・悪役・敵役】 ※この話に、悪人や犯罪を標榜するような意図はありません。 |